――――――――――――――――――――
・以下,注記などについてはあえて外してあります。
・詳細をお知りになりたい方はこちらまでご連絡下さい。
・引用などなされる場合はこちらをご参照のうえ、注意事項を必ず守って下さい。
――――――――――――――――――――
・世界経済における中国の
GNI主要経済指標の一つである国民総所得(
Gross National Income;以下,「GNI」)からみていこう。中国のGNIは2002年に総額1兆2095億米ドルに達し,世界第6位となった。しかし,1人あたりGNIに換算すると940米ドルと非常に小さい。これは,国全体としての規模が大きく,人口が多いために1人あたりの所得が低く見積もられるのであるが,数値的には世界第1位のスイスのおよそ1/37の規模であり,ランキングからしても工業先進国の海外から得る純所得がいかに大きいか分かろう。同様に,PPP換算でみたGNIも,総額では世界第2位に入ってすでに日本を抜いている。中国は工業先進国などと比較して,物価水準が相対的に低いので,1人あたりでみると4390米ドルと非常に小さく,世界第1位のノルウェーのおよそ1/8,日本のおよそ1/6程度にとどまっている。
図表 世界の
GNIランキング‐2002年‐
順 位 |
国名 |
GNI 総額 |
1 人あたりGNI 総額 |
国名 |
GNI 総額 ( PPP値) |
1 人あたりGNI 総額( PPP値) |
|
|
10 億米ドル |
米ドル |
|
10 億国際ドル |
国際ドル |
1 |
米国 |
10110 |
35060 |
米国 |
10110 |
35060 |
2 |
日本 |
4265 |
33550 |
中国 |
5625 |
4390 |
3 |
ドイツ |
1870 |
22670 |
日本 |
3315 |
26070 |
4 |
英国 |
1486 |
25250 |
インド |
2691 |
2570 |
5 |
フランス |
1342 |
22010 |
ドイツ |
2163 |
26220 |
6 |
中国 |
1209 |
940 |
フランス |
1556 |
26180 |
7 |
イタリア |
1097 |
18960 |
イタリア |
1467 |
25320 |
8 |
カナダ |
700 |
22300 |
ブラジル |
1266 |
7250 |
9 |
メキシコ |
596 |
5910 |
ロシア |
1127 |
7820 |
10 |
スペイン |
594 |
14430 |
カナダ |
882 |
28070 |
参考 |
スイス |
274 |
37930 |
ノルウェー |
163 |
35840 |
〔注記〕「参考」はそれぞれ「
1人あたり」の世界第1位を示す。【出所】
World Bank, World Development Report 2004.
・世界経済における中国の
GDPしかし,
GNI総額でみた場合の世界における中国経済の台頭は,1980・90年代を通じた高度な経済成長が背景にある。国連貿易開発会議(United Nations Conference on Trade and Development;以下,「UNCTAD」)が発表した“World Investment Report 2003”(『世界投資報告‐2003年‐』)によれば,途上国の2002年の平均成長率は3.3%で前年を上回ったが,1990年代平均の5%には及んでいない。このような状況にあって,中国は1980年代を年平均9.8%,1990年代を9.7%,2000年から2002年までは7.8%の成長を実現してきた。これは,従来まで支配的な経済指標となっていた国内総生産(Gross Domestic Product;以下,「GDP」)の成長率を単純平均化したものであるが,これで中国の状況を比較すれば,2000年に初めて1兆米ドルを突破して以降,2002年には1兆2661億米ドルとなって世界第6位にまで成長した。1人あたり平均GDPも2002年に初めて1000米ドルに達して,PPP換算では日本を抜いて世界第2位の6兆1374億国際ドルとなっている。これは,世界経済の構成比ですでに12.7%を占めるに至っている。GDP総額の世界シェア‐2002年‐
順位 |
国名 |
GDP 総額 |
GDP 成長率 (対前年) |
国名 |
GDP 総額( PPP値) |
GDP 世界構成比 ( PPP値) |
|
|
億米ドル |
% |
|
億国際ドル |
% |
1 |
米国 |
104463 |
2.4 |
米国 |
102251 |
21.1 |
2 |
日本 |
39864 |
0.2 |
中国 |
61374 |
12.7 |
3 |
ドイツ |
19923 |
0.2 |
日本 |
34450 |
7.1 |
4 |
英国 |
15668 |
1.9 |
インド |
23106 |
4.8 |
5 |
フランス |
14374 |
1.2 |
ドイツ |
21473 |
4.4 |
6 |
中国 |
12661 |
8.0 |
英国 |
15668 |
1.9 |
7 |
イタリア |
11880 |
0.4 |
フランス |
15490 |
3.2 |
8 |
カナダ |
7352 |
3.3 |
イタリア |
14743 |
3.0 |
9 |
スペイン |
6551 |
2.0 |
ロシア |
12995 |
2.7 |
10 |
メキシコ |
6371 |
0.7 |
ブラジル |
12748 |
2.6 |
【出所】
IMF, International Financial Statistics 2003.
2000年に入り,世界貿易の平均成長率は減少基調にあるのだが,中国の世界貿易に対する地位は年々上昇しており,その規模は輸出で1980年の世界第30位から2002年に第5位,輸入で第22位から第6位となった。金額でみれば,輸出は世界第1位の米国の半分にも満たず,輸入に至っては米国の1/4程度である(2002年)。しかし,その世界貿易におけるシェアは,輸出で5.1%,輸入で4.4%を構成しており,主要工業先進諸国と肩を並べる規模にまで成長している(2002年)。このことは,低廉で豊富な労働力を背景として国際通商問題にまで発展するような経済上の課題を世界に衝きつける結果となっており,世界経済に対する中国の経済的プレゼンスは年々上昇しているのである。
図表 世界の輸出入シェア‐
2002年‐
順位 |
|
輸出 |
|
|
輸入 |
|
|
国名 |
世界シェア |
金額 |
国名 |
世界シェア |
金額 |
|
|
% |
10 億ドル |
|
% |
10 億ドル |
1 |
米国 |
10.8 |
693.5 |
米国 |
18.0 |
1202.5 |
2 |
ドイツ |
9.5 |
612.2 |
ドイツ |
7.4 |
493.3 |
3 |
日本 |
6.5 |
416.0 |
英国 |
5.1 |
339.8 |
4 |
フランス |
5.1 |
329.5 |
日本 |
5.0 |
336.4 |
5 |
中国 |
5.1 |
325.6 |
フランス |
4.9 |
326.4 |
6 |
英国 |
4.3 |
275.9 |
中国 |
4.4 |
295.2 |
7 |
カナダ |
3.9 |
252.5 |
イタリア |
3.6 |
241.1 |
8 |
イタリア |
3.9 |
252.0 |
カナダ |
3.4 |
227.6 |
9 |
オランダ |
3.8 |
243.4 |
オランダ |
3.3 |
217.7 |
10 |
ベルギー |
3.3 |
213.2 |
香港 |
3.1 |
208.6 |
【出所】
WTO, World Trade Report 2003.
中国側の長期統計でみても,
2002年には総額で6207.9億米ドル(輸出3255.7億米ドル,輸入2952.2億米ドル)に達しているのであるが,1980・90年代を通じて前年を上回る順調な成長があったわけではない。貿易総額でみれば,1980年代は約2.9倍(輸出約3.4倍,輸入約2.7倍),1990年代は約4.1倍(輸出約4.0倍,輸入約4.2倍)で,相対的に順調な貿易拡大があったかのようにみえる。しかし,その1980年代の平均成長率は約14.9%(輸出約14.9%,輸入約15.6%),1990年代は約12.7%(輸出約14.4%,輸入約11.5%)であったことから,とりわけ1990年代には成長ペースが鈍化し,世界経済との関連で景気動向に左右され,前年を急激に上回ったり,下回ったりしている。
図表 中国の貿易額,成長率推移
総額 |
(対前年比) |
輸出 |
(対前年比) |
輸入 |
(対前年比) |
|
年 |
億ドル |
% |
億ドル |
% |
億ドル |
% |
1979 |
293.3 |
42.1 |
136.6 |
40.1 |
156.7 |
43.9 |
1980 |
381.4 |
30.0 |
181.2 |
32.7 |
200.2 |
27.8 |
1981 |
440.3 |
15.4 |
220.1 |
21.5 |
220.2 |
10.0 |
1982 |
416.1 |
− 5.5 |
223.2 |
1.4 |
192.9 |
− 12.4 |
1983 |
436.2 |
4.8 |
222.3 |
− 0.4 |
213.9 |
10.9 |
1984 |
535.5 |
22.8 |
261.4 |
17.6 |
274.1 |
28.1 |
1985 |
696.0 |
30.0 |
273.5 |
4.6 |
422.5 |
54.1 |
1986 |
738.5 |
6.1 |
309.4 |
13.1 |
429.1 |
1.6 |
1987 |
826.5 |
11.9 |
394.4 |
27.5 |
432.1 |
0.7 |
1988 |
1027.9 |
24.4 |
475.2 |
20.5 |
552.7 |
27.9 |
1989 |
1116.8 |
8.6 |
525.4 |
10.6 |
591.4 |
7.0 |
1990 |
1154.4 |
3.4 |
620.9 |
18.2 |
533.5 |
− 9.8 |
1991 |
1357.0 |
17.6 |
719.1 |
15.8 |
637.9 |
19.6 |
1992 |
1656.1 |
22.0 |
850.0 |
18.2 |
806.1 |
26.4 |
1993 |
1957.2 |
18.2 |
917.7 |
8.0 |
1039.5 |
29.0 |
1994 |
2367.0 |
20.9 |
1210.0 |
31.9 |
1157.0 |
11.3 |
1995 |
2808.5 |
18.7 |
1487.7 |
23.0 |
1320.8 |
14.2 |
1996 |
2899.0 |
3.2 |
1510.6 |
1.5 |
1388.4 |
5.1 |
1997 |
3250.0 |
12.1 |
1827.0 |
20.9 |
1423.6 |
2.5 |
1998 |
3239.2 |
− 0.4 |
1837.6 |
0.5 |
1401.7 |
− 1.5 |
1999 |
3607.0 |
11.3 |
1949.0 |
6.1 |
1658.0 |
18.2 |
2000 |
4743.1 |
31.5 |
2492.1 |
27.8 |
2251.0 |
35.8 |
2001 |
5097.7 |
7.5 |
2661.6 |
6.8 |
2436.1 |
8.2 |
2002 |
6207.9 |
21.8 |
3255.7 |
22.3 |
2952.2 |
21.2 |
80 年代 |
約 2.9倍 |
平均 14.9% |
約 3.4倍 |
平均 14.9% |
約 2.6倍 |
平均 15.6% |
90 年代 |
約 4.1倍 |
平均 12.7% |
約 4.0倍 |
平均 14.4% |
約 4.2倍 |
平均 11.5% |
00 〜02 |
約 1.3倍 |
平均 20.3% |
約 1.3倍 |
平均 19.0% |
約 1.3倍 |
平均 21.7% |
〔注記〕
1980年より関税ベース。1979年は対外経済貿易部資料による。【出所】『中国統計年鑑』各年版。
このような,貿易状況を製品別でみると,衣類や織糸・織物と繊維製品の割合が非常に高く,次いで自動データ処理機や靴類と続く(
2002年)。輸入では,ICマイクロ電子部品が多く,次いで同じく自動データ処理機と続き,さらにプラスティックや原油,鋼材,半導体などが続いており,総じて中間財的性格の製品(部品や附属品)が大半を占めている(2002年)。
図表 中国の主要貿易商品‐
2002年‐
順 |
輸 出 |
輸 入 |
||
位 |
商品名 |
金額 |
商品名 |
金額 |
万米ドル |
万米ドル |
|||
1 |
衣服(同附属品を含む) |
4119009 |
IC マイクロ電子部品 |
2564787 |
2 |
自動データ処理機(部品を含む) |
3325491 |
自動データ処理機(部品を含む) |
1592765 |
3 |
織糸・織物(附属品を含む) |
2058330 |
プラスティック |
1333085 |
4 |
靴類 |
1109053 |
原油 |
1275734 |
5 |
プラスティック製品 |
605276 |
鋼材 |
1236585 |
6 |
玩具 |
557463 |
二極管・類似半導体 |
471500 |
7 |
家具 |
536055 |
電機計測機器 |
468716 |
8 |
携帯電話・自動車電話 |
528024 |
ブレーカー・安全器(部品を含む) |
463534 |
9 |
テレビ・ラジオ・電信設備(部品を含む) |
435839 |
銅・銅合金 |
443688 |
10 |
旅行用品・鞄 |
435762 |
テレビ・ラジオ・電信設備(部品を含む) |
411488 |
【出所】『海関統計』
2002年第12期。
中国は
1978年末の「改革開放」政策を契機として,経済特区の設立や沿海都市部の開放,さらには「全方位型(※1)」の開放を進めることで,外資系企業による資本導入,技術移転,経営ノウハウの移転などを試みた。改革開放後は,合弁企業法(1979年)や外資企業法(1986年)などの法規制度を整備し,外資が原材料や部品を輸入して,それを国内で加工して輸出するという加工貿易が主流となっており,雑製品や繊維製品などの軽工業が発展してきた(※2)。1990年代,とりわけ1992年のケ小平氏による「南巡講話」(経済特区視察)以降,それまで主体的であった香港などの華僑・華人投資に加え,日欧米からの対中進出も急増し,生産拠点を求めて様々な業種が中国に参入してきた。こうして,2000年以降は世界の対外直接投資が世界的な景気低迷を背景にして延び悩んでいるにもかかわらず,中国はルクセンブルグに次いで対内直接投資で世界第2位となっている(※3)。他方,国際収支ベースでみた対内直接投資では,中国はフランスに次いで世界第2位となり,また世界銀行の調査では,従来まで世界第1位を維持していた米国を抜いて,初めて世界第1位となった。※
1:「全方位型」とは,従来までの沿海都市部の開放区だけでなく,内陸や辺境地域の開放を実施したことによる。※
2:加工貿易は主に「来料加工」(processing materials;外資が原材料を国外から持ち込み,加工後は輸出する)と「進料加工」(processing imports;中国企業が原材料を輸入し,加工後は輸出する)などがある。※
3:世界の対外直接投資は2000年の過去最高1兆3930億米ドルから2002年には6512億米ドルと,約半減している。また,ルクセンブルグやオランダへの投資は主に,金融持株会社や金融子会社などを介在にして租税を回避する事例(いわゆる「ダッチサンド」現象)が増加しており,この一部が直接投資統計として計上されている。
図表
FDI受入ランキング‐UNCTAD・IMF:2002年‐
順 |
UNCTAD |
|
IMF |
|
位 |
国名 |
金額 100 万米ドル |
国名 |
金額 100 万米ドル |
1 |
ルクセンブルグ |
125660 |
フランス |
52020 |
2 |
中国 |
52700 |
中国 |
49308 |
3 |
フランス |
51505 |
米国 |
39633 |
4 |
ドイツ |
38033 |
ドイツ |
37296 |
5 |
米国 |
30030 |
オランダ |
29228 |
6 |
オランダ |
29182 |
英国 |
28180 |
7 |
英国 |
24945 |
アイルランド |
24697 |
8 |
カナダ |
20595 |
スペイン |
21284 |
9 |
アイルランド |
19033 |
カナダ |
20501 |
10 |
ベルギー |
18252 |
ブラジル |
16566 |
【出所】
UNCTAD, World Investment Report 2004., IMF, International Financial Statistics 2004.連絡用 E-Mail:yasugi@ac.fm
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